あたしの執事

そういえば、私遅刻してたんだっけ。あぁ、ただでさえ少ない給料が…。


愛梨は着替えようとすれば、するほど手がもつれて背中のチャックがなかなか上がらない。


やっとのことで、着替えて外に出ると、目の前にいる渚が振り返った。


「似合うじゃない。」
にっこり、渚が微笑んだ。


今日、初めて彼女の笑顔を見たかもしれない。

さっきからの言動からは考えられないほどの、

ふわっと花が咲いたような笑顔。



愛梨はその笑顔に思わず見とれていると…


「なに、人の顔凝視してんの。行くよ!」


渚は、またいつもの仏頂面(ぶちょうづら)に戻ると、ドアの方へと向かった。



愛梨は、よいよだ、ごくりと唾を飲んで、未知のアルバイトの世界に繋がるドアに向かった。