ポケットの中で、
携帯がせわしなく震えてる。
誰か見なくても、
彼じゃないことは確かだ。
携帯を手に取りそのまま耳に当てると、
聞きなれた声があたしの耳に届く。
《千夏ー? どこいんの?
いっしょに写真撮ろうって言ったじゃーん》
あたしの今の心境とは、
明らかに違う愛の声。
そりゃそうだ。
中学も卒業で、
嬉しくて仕方ないんだと思う。
「ごめんね。ちょっとさ」
《あれ、どうしたの?
もしかして告白とかされてた?》
「ばっか。んなわけないでしょ?」
《あはは。そう?
なんかあったの? なんかしてた?》
弾む愛の声が痛い。
“振られた”なんて、
絶対に言わない。 言えないよ・・・・
卒業して喜んでる愛に、
水をさすようのこと言えない。