『俺、美咲といると楽。』

『何ソレ。』

『だって、美咲、大人でしょ?』


少し前の、サークルの飲み会で、来夏が隣に座って、私にそう言った。



「美咲といると楽」

私は勝手にそれを特別な言葉だと思い込んでいた。


私は、うぬぼれるワケじゃないけれど、来夏と同じように、異性から安っぽいアプローチを受けることが多かった。

だから、来夏の気持ちがわかってた。

追われると逃げたくなるのは、私も同じだったから。

度重なる女の子からのアプローチを曖昧に笑ってかわす。

そして、誰とも極端に近づこうとはしなかった。

来夏についたあだ名は『小悪魔』だった。

それって、普通は女の子に使うんじゃないの?
美咲みたいなさ。

来夏はそう言ってまた笑った。




「俺、美咲といるとラクだよ。」


少年のような顔。
来夏は、また私に勘違いをさせるつもりだ。

でも、舞い上がったりはしたくなかった。