青い空がスクリーンの上を流れてゆく。
両耳に情緒感あふれる音声。
それと同時に、すすり泣きの声が聞こえる。

今話題の純愛映画はクライマックス真っ盛り。
今にも病気の女の子は尽き果てそうだ。
ハンサムな、男の子の腕の中で。

純愛、青春、涙誘う音楽、青い空、美男美女。

泣ける要素がたっぷりの映画館の箱の中。
それでも、私はどこか冷静だった。


「彼女が亡くなっても、彼女が忘れられない」

と映画の中の男の子は言った。


ずっと同じヒトを忘れられずに、
ずっと同じヒトを好きでいる。


エンドロールが流れ、右隣に座っていた雨宮が私の肩をたたいた。

「すごいね、純愛だね。」


ずっと同じヒトを忘れられずに、
ずっと同じヒトを好きでいる。

それが純愛?


「いやー、泣けたわー」

立ち上がって、そう言ったのは左隣の立川。

「切ないよねー!!!」

雨宮と立川の声がユニゾンする。

私は笑った。

その意見に同調したように見せかけた。

「純愛」イコール「切ない」イコール「泣ける」

その方程式。

でも、本当に泣けるのは、今の私の状況だ。