ブティック街を抜けてさらに歩くと、 玄関には白手袋のドアマンが立つ古くからの高級住宅街に入る。 アッパーイーストと呼ばれるその地区のアパートはどれもセントラルパークが眺望できて、 逆立ちしたって住める家賃じゃない、と雛子が言っていた。 地図をしまい、トートバッグから昨日と同様にして デジタルカメラを取り出すと、浸りきってシャッターを切った。 だけど本当は、胸のざわめきから意識を逸らしたくて必死だった。