ジェンガたちの誤算


いつの間にか熟睡していた私はケータイの着信音が鳴って目を覚まし、
ディスプレイを見ると「通知不可能」と書かれていたので、
自分が日本にいないことを思い出して通話ボタンを押した。

『ハロー?ももちゃん?ひーたんだよ』

「ひーたん?着いたよニューヨーク」

『うんうん学校もうすぐ終わるから、そのホテル、
 何アベの何丁目かなぁ、ひーたん行くよ』

「えっとたしか42ndストリート沿いの、セカンドかサードだよ」

『さすがももちゃん、マンハッタンの街、理解するの早いね、じゃあとで』

「ほいっ、あ、部屋は1107ね」

『おーけーじゃあ後でね、バイっ』

電話で話すのは4年以上ぶりだったのに、
あの頃と変わらず一人称が名前の雛子とそれにつられる私、
ハローとバイだけでも、発音がきちんと「英語」の彼女。

変わるものと変わらないもの、
それを感じることができる旧友との会話はとても、居心地がよかった。