【餞の言葉】をさほど緊張することなくこなし終えた私の心臓は、 卒業式を終えて賑わう高等部の校舎の廊下でありえない速さで脈を打っていた。 3年A組、高等部校舎の一番西側にあるその教室の前で、 他の生徒会役員たちと一緒に最後のHRを終えて出てくる対馬先輩を待っていた。 花や寄せ書きをした色紙を渡すのが恒例となっている中で私は、 対馬先輩宛に個人的に手紙を書いていた。 自分からまともに声をかけたことなどなかったから、 大したことが書いてあるわけでもないその手紙を渡すのすら、一大事だった。