中に入っているのはミヨの写真。

二人で行った海岸で、夕焼けをバックに俺が取った写真だ。

「……そう、だな」

俺は写真立てを手にとって、しゃがみ込み目を瞑る。

「ミヨ、泣くだろうな。気づかなかったって後悔するだろうな。引きずるだろうな……」

自分に言い聞かせるように呟く。

「……俺が、死ぬんじゃなく、『消える』なら…」

写真立てを右手に持って、立ち上がる。

「せめて、ミヨが悲しまないように……」

よろよろと玄関にたどり着き、靴を履く。

「ユキなら、うまく誤魔化してくれるか……」



呟きながら、俺は、バイクにまたがってミストへと向かった。