一人の部屋に帰って、膝を抱える。

「次に発作が起きたら、入院してもらいます。それまでは…普段どおりに生活してください」

医者が言った言葉だ。

普段どおり?

普通に?

いままでのように?

無理に決まっている。

死ぬことがこんなに怖いなんて思ってもみなかった。

いや、多分だれしもこの恐怖は本能の中にある。

ただ、それと直面する機会が少なすぎて、ないのだと錯覚しているだけなんだ。

「クソッ!クソッ!」

部屋の中をメチャクチャに荒らす。

デスクをひっくり返し、テレビを叩き落とし、ギターをぶち折った。

サイドボードの上のものを落とそうとして、そこにある写真立てに目が止まる。