「あー、ヤベェ」

いままでにも何度かあったけど今回は本格的にヤバい。自分でもよくわかる。

部屋にはミヨがよこしたぬいぐるみなんかもあったけど、さすがにそれに抱きつくのはどうかと思って、

ベッドの下にあったギターケースを引っ張りあげて、それにしがみついて耐える。

くっ、とくぐもった声をだしてから、大きく息を吐く。

何度か繰り返して、少し楽になる。いや、そんな気がしているだけだろう。

ドアの外でぱたぱたと足音がする。

ああ、よかった、ミヨだと思うのと、ドアが開いてミヨが怒鳴り込んでくるのは俺の意識ではほぼ同じに思えた。

「ちょっとマキトなんで電話でな…なにやってんの!」

そう言うとマキトは俺からギターケースを取り上げてにらみつける。

「まったく、ほんとに何を…ってマキト?」

顔を覗きこんで説教しようとして、ようやく俺が辛そうにしているのに気づいたらしい。

「ちょっと、大丈夫!?」

「ダイジョブくねぇ……」

「きゃー!救急車救急車!何番だっけ!104に聞けばわかる!?」

なんで104がわかって119がわかんねぇんだろうと思ってから、俺が次に気づいたのは病院のベッドだった。