「ねえ、ミヨちゃん」

「はい」

「今から出てこれる?」

そう言われて私は自分の姿をやっと省みます。

汗をかいたブラウスに着っぱなしのスーツ、とてもじゃないけど外に出られる格好じゃないし、

いまから着替えてどうこう、という気にもなれませんでした。

「……ちょっとムリです」

「そっか、じゃあさー」

「アタシいまからミヨちゃんの部屋行くから、よろしく」

「はい!?」

そう言って、ユキさんは電話を切りました。

前に聞いたユキさんの家はここから車で30分くらいのところだったはずです。

部屋にかけてある時計の針は、11時30分を指しています。

私はやっとの思いでベッドから起き上がり、洗面所へ向かいました。