「もういいわよ…もういい!知らないわよマキトなんか!どこぞの女の所にでも帰れ!」

そう言って、バッグからサイフを出したのは、我ながら意外と冷静だなと感心しました。

基本的にサイフを持ち歩かないマキトが、この店で代金を払ったことがなかったのを無意識に思い出していたのでしょう。

お札を出したところでそれに気づいて、引っ込みがつかずテーブルに叩きつけて歩き去ります。

「私の分も食べといて、じゃあね」

そう言って、私は乱暴に扉を開けて店を出ました。

後ろから「お客さん!?」という声が聞こえましたが放っておきました。

お金は置いてあるし、マキトも置いてきました。別にお店も困ることはないでしょう。