「『オレは消える』って。『ミヨに言うつもりはない』ってね……」

「……でもそれってやっぱり、女が出来たからっていうんじゃ」

私は自分で言ってからマキトの性格を考えてそれはないな、と思いなおしました。

アイツはそう言う場合「俺、女できたから別れる」とか言いそうです。

ヘタすると無神経なので、私に新しい彼女を紹介しかねません。

「いいえ、それは絶対に違うわ。彼は、あなたのために消えるんだって、そう言ってた」

よく、頭をハンマーで殴られたような感覚っていうけど、あれとは違う、なんて言うか、頭をシェイカーで振られているような感覚。

記憶や思考や感情が、ぐるんぐるんと頭の中で暴れて収拾がつかなくなって、くちをパクパクさせていると、ユキさんがまた私の頭をぽんぽんとし始めました。

「人間ってさ、忘れられたら死んじゃうんだって、その人の中で」