「んで、どうしたの?まさかミヨちゃんが楽器でもあるまいし」

ユキさんは基本的に回りくどい言い方というものを一切しません。

でも私も内緒と言われているのに「マキトと待ち合わせなんですー」なんて言ってしまうほどアホでもありません。

まあ、だからこそ悩んでしまうのですけど。

ずいぶん長い「えーっと」を経て、私がごまかすために吐いた言葉はある意味本心だったかもしれません。

「ユキさん、三年前、マキトが消えた時のことって覚えてます?」

「……今更、そんなことを聞きに来たの?」

ユキさんの表情が曇りました。何か、思い出したくないことを思い出さなくてはいけない、そんな顔でした。

「忘れなよ、もうマキトのことはさ」

そう言いながらも、店内にある椅子に腰掛けて手招きします。