「下級生にギターうまいのがいるって聞いて強引にバンドに誘ったんだよね」

「あー、そうだったんですか」

「でもさ、ミヨちゃんと逢ってからのアイツは全然違ったじゃない、なんていうか、すっごいミヨちゃんっ子ていうか」

「甘えきってましたね。自分がやらなくても私が何でもしてくれると思ってたんじゃないですかね、アレは」

私は過去のマキトの悪行の数々を思い出します。

栄養失調事件、異臭事件、ペット事件に出前事件……

どれもこれも、私がいなかったらいろいろと大惨事になっていたであろうことばかりです。

「でもさ、前にも言ったけど、多分それがマキトの本性なんだよ。ろくでもないけど」

「本性じゃないほうがよかったなぁ……」

私が呟くと、ユキさん「ミヨちゃんは苦労人だ」と笑っていました。

「それで、苦労人さんから見たマキトの第一印象は?」

「そうですね、第一印象…あれ?」

「どうしたの?」

「もしかして、でも、確かに…」

私の頭の中にフラッシュバックする光景がありました。

――暗いステージ

――薄いライト

――浮かぶシルエット

――聞こえるメロディ





「…ユキさん…行きましょう」