ユキさんは、そんな私に気づいたのか、笑いかけてくれました。

「大丈夫だって、アタシもミヨちゃんのこと信じてるからね」

「ユキさん…」

「それにしても、こんなになっちゃったんだ…」

ユキさんは寂しげにマンションを見上げました。

そして、小さな植え込みを囲んだブロックに埃をよく払ってから腰掛けて軽く、目をつぶって吐き出すように言いました。

「通ったねー、ほんと、よくやったわ」

そう言って、ポツポツとバンド時代の思い出を語るユキさんには、目の前に思い出のスタジオが見えているようでした。