話の後、私とユキさんはコンビニで簡単に昼食を買いこみました。

時間はお昼には少し早いですが、昨日の夜ユキさんが言った通り「今日は長くなりそう」なので、

食べ物は手軽に持ち歩けたほうがいいと思ってです。


コンビニを出て車を走らせると、まあ走らせているのはユキさんですが、すぐに海岸が見えてきました。

海沿いの道から見る海岸は、オフシーズンのせいか誰もおらず、穏やかな波が寄せては返すだけです。



私とマキトがよく来た、あのころのように。


「よ、っと」

ユキさんはうちに来たままのブーツで、コンクリートの階段から砂浜に降ります。私も続いて降ります。

ザリザリという音の中に、時折カチカチという貝殻の音が混じります。

ゴミもろくに片付けられていない砂浜はお世辞にも綺麗とは言えませんでしたが、逆に懐かしさがこみ上げて来ます。

マキトはこの季節の穏やかな海が好きでした。

それは単に人がいないのがいいだけだったのかもしれませんが、海に人が集まるシーズンにはほとんど来ませんでした。

砂浜を歩いて貝殻を拾ったり、何かもわからないゴミに興味を示したり、まるで子供のように歩き回っていました。

時には、ギターを持ってきて海に向かって歌ったりしていました。

私は、そんな時いつも、海にマキトを独占されまいと、海とマキトの間に割って入っては、演奏に聞き入っていました。