「二日目、マキトが海に行こうって言ったんだよね。そしたら、その日海にいってたら、マキトの存在がもう少し安定してたのかもしれない」

「安定?」

「やっぱりさ、ありえないことなんだよ、死んだ人がこの世にいるってことは。不安定で、不合理で、不都合なこと」

「その不都合を安定させるのに思い出の力がいるってことですか?」

私はわからないなりに、今までのユキさんの話から言葉を拾って返します。

「そういうことかな。それで、昨日の深夜マキトが言ったのよ『思い出がある全部の場所まわってくれ』って」

「聞き取れてたんですか?」

「ううん、でもそう言ったと思うといろいろと辻褄があうからね」

私はさっきのミストでのことを思い出します。

私の携帯に着信だけしたマキトからの電話。少し、安定したってことなんでしょうか…?

その結論に一応辿りついた私はバッグから携帯を取り出して左手に握り締めました。

これなら、次に行く海岸でまた携帯が鳴っても、取りそこなうことがないと思ってです。

ユキさんの話が正解だとすると、こういうことでしょう。

最後の場所、それはどこかわかりませんが、そこにたどり着いたらまた、マキトに会える……