「はい?」

もう何度言ったかわからない言葉と共に、ユキさんを見つめます。

「アタシ、前にミヨちゃんに言ったよね『人は忘れられると死んじゃう』って」

「あ、はい」

「あれね、ほんとはもっと別の言い回しなの、アタシが勝手に変えたの」

ペロリ、と舌を出しながら、ユキさんは天を仰ぐように続けました。




「人は2回死ぬ。最初は心身が死んだとき。2度目は、その存在を忘れられた時」




そう言って、ユキさんはベッドに潜り込みました。

「ちょ、ユキさん?」

「夜明けまでまだあるし、少し寝ておいて、明日は、長くなりそうだから」

そう言うが早いか、すやすやと寝息を立て始めました。

私は、仕方なくベッドの残りで体を縮こまらせて布団をかぶりました。




枕元に、目覚ましのタイマーをセットした携帯電話を置いて。