すすり泣きが聞こえる。
 恵弾は床の敷物の模様を見ていた。今は何もすることがない。

 恭姫の足の怪我を暁晏が診ている。その周囲を、彼女の両親や高官、女官が見ている。楴という兵士は、この部屋には入らずに去った。
 空気が重い。

「姫様、ニ三日はこの臭いを我慢なさって下さい。それと、頭痛がございましょう。痛みを和らげる薬を調合いたしますが、まずはよくお休みなさることが肝要です」
 どこかたどたどしい、暁晏の声。

「枋先生」
 恭姫はうつ向いて問う。
「この傷、蛇殺しの草だそうね」
「はい。毒蛇をも殺す毒を持った草の傷でございます」
 ただ立っているだけなのに、恵弾はどうしようもない喉の渇きを覚える。さきに食べた饅頭だけの所為ではない。