恵弾の手紙は続く。

『我が家には、父さんと恵孝がいる。よもや、三人共召されることはないだろうが、他家では事情が異なるかも解らない。町衆の病を診、怪我を治療する者が減るのが必定。甚だ心配である。』

 文面は、失望の色が濃い。そして、恵弾自身の今後については何も触れられず終いだった。

「爺様……」
「様子を、見るしかあるまい」
 丁寧に手紙を畳み、仕舞う。恵正は湯飲みを手にし、ゆっくりと立ち上がった。

「陛下はもう、姫様の余命のことを知っていらっしゃいます」
 恵孝は城で見聞きしたことを密やかに話した。
「じゃが、医師を掻き集めるような下知は出されておらぬ。恵弾の懸念は、今はまだ只の憶測に過ぎぬ」

 口では、恵孝を諭すように落ち着いた様子を見せている。が、その手は強い感情に震えていた。