「しかし、せめて夜が明けなければ兵士に危険が」
「何と」
 王妃が悲鳴を上げた。
「そなたは、この国の姫の命よりも一兵士の命が重いと言うのか」
 王妃を支える章王が、厳しく兵士を睨みつけた。
 兵士は数々の言葉を飲み込み、もう一度敬礼をすると、夜の雨の中へ戻って行った。


 真夜中に、ぴたりと雨が止んだ。しかし、月は現れなかった。