「姫様は、あと二日も待たずお目覚めになります。傷も次第に塞がるでしょう」

 恵孝は一度口をつぐんだ。部屋の空気は張りつめている。恭姫の呼吸だけが耳につく。

「しかし、傷から入った毒は消えず、姫様の命を蝕みます。死に至る、蛇殺し草の毒です」
「蛇殺し草……」
 章王は顎に手を当てた。侍女がわなわなと震える。
 恵孝はそっと振り返って暁晏を見た。この草が原因であることは臭いや症状から容易に推測できる。何故二人が、急に動揺したのか。

「陛下」
 暁晏は恵孝の視線に耐え切れず、口を割った。
「暁晏、この若い医者はお前と一言一句違わぬことを言う……初めだけはな。その様子だと当然、存じていたのだな」
「申し訳ありませぬ」
 違う、ただ暁晏が草のことを伏せていたために動揺しているのではない。恵孝は章王の言葉を待った。