脈を数え、額に触れる。なるほど、熱が高い。
「その、右足の傷は」
 侍女が王女の上掛けを捲った。右足の脛に、ぐるぐると包帯が巻かれている。薬が滲んで包帯に染みている。

「解きますか」
 侍女に聞かれ、恵孝は首を振る。すでに暁晏や恵弾が詳しく診ているはずだ。それに、この量の薬を塗るほどの深手の傷を、
「あなたも、見るのが辛いでしょう」
 侍女がはっと目を見開いた。みるみるうちにその目に涙を貯め、うつ向いて頷いた。

「陛下、枋先生か父に傷の様子を尋ねたいのですが、よろしいでしょうか」
 うむ、と章王は頷いた。暁晏が幕の中に入れられ、傷の詳細を述べた。暁晏がどのような判断をしたのかには一切触れず、恵孝も尋ねない。
 暁晏、恵弾と同じ診断を恵孝が下すか――これが、二人を言われのない圧力から救う方法であることを、恵孝はひしひしと感じている。

「わかりました」
 恵孝はひとつ頷いた。
「私の考えを申し上げます」