恭姫は何気なく周囲を見回した。そして気づいた。織機を操っているのは全て女で、それも恭姫と同じ年頃の者が少なくない。十を過ぎたかどうかという子どももいる。
「ここにいる人が皆、あなたのように織れると言うの?」
 この問いにも女は首を振った。綺与は笑い声を挙げた。
「まさか、姫様。この子は、楠里登と言いますが、もう十年も織機の前に座っていますよ。里登の技は日々の積み重ねの賜物です。今いる織り子の『あねさん』ですからね。でも、初めは皆、同じです。単純に縦糸と横糸とを、正確に織るところから」

 それまでただの雑音だった機織りの音が、恭姫の耳にはっきりと意思を持って聞こえた。真っ白な布を織っている者も、鮮やかな模様を織っている者も、初めは皆同じ。

「姫様の機をご用意しています。さあ、始めましょう」
 綺与の誘いに、恭姫は素直に頷いた。