多めの卵焼きが乗った皿を、恵正は平らげた。丹祢がほっとした表情を浮かべている。
「明日から、表を開ける時間を短くしようと思う」
 食後の茶を入れた富幸は二人の前に茶碗を置き、自分も茶碗をもって席に着いた。丹祢と共にそのことを話していたので、恵正からその言葉を聞いて富幸は素直に頷く。 

「朝から昼までの日と、昼から日暮れまで開ける日に分ける。あとの時間は、薬作りじゃ。二人は家でできることをしておくれ、儂は薬草を取りに行く」
「お一人で?」
 富幸は心配して言う。首を振ったのは丹祢だ。
「貞陽に手伝ってもらおうと思っているよ」
「まあ」
「なんじゃ、「街の子」では不満か」
 今度は富幸が首を振る番だった。
「いいえ、その反対です。貞陽に。良い考えだと思います」