片方に分銅を載せた秤に、乾燥させた薬草を載せて重さをみる。何度もその薬草を測り、先に分けてある別の薬草と合わせるのだ。
「あまり、根を詰めると体に毒だよ。私や富幸にできることはやらせてくださいよ」
 もう五十年以上も見てきた背中に、丹祢はそう声をかける。

「二人は家の中のことをやってもらっているからなあ」
 こちらを見ずに恵正は答えた。息で薬草を吹き飛ばさないよう口元を布で覆っているので、声は少しくぐもっている。

「焦っても仕方ないことというのは、どうしてもあるものさ」
「儂は何も焦っておらんぞ。診療と薬の調合が同時に進められないから、表を閉めた後にやるしかないだけじゃ」
「焦っていますよ。薬草を取りに行けないでしょう」
 丹祢は履き物に足を入れ、土間に下りる。恵正の傍へ行き、その肩に手を置いた。痩せてしまった肩だ。

「恵弾も恵孝も、各々の為すべきことをしっかりとやっているよ。きっと」
「そうじゃろう。儂とお前の子と孫だ」
 恵正は薬草を量り終え、薬包紙を畳んでいく。熱に効く薬だ。丹祢も移動し、同じ作業をする。