「アベル!」

「フェイ…終わりましたよ。」


その声に弾かれたようにフェイは立ち上がり、アベルに駆け寄った。

「アベル…。」

言葉と同時に両腕を差し伸べギュッと彼の身体を抱き寄せる。
そのフェイの背中に、アベルがそっと腕を回し優しく抱きしめ返す。
こちらへ向けた、美しい顔が穏やかに笑みを浮かべ…フェイの顔をジッと見つめた。


恋人達の熱い抱擁を見つめながら、レオルドはフゥと溜息をついた。
己の身体に視線を走らせ苦笑いを浮かべる。


(ははっ…暇つぶしのつもりが…随分と派手にやられたものだ…。)

胸元から滴り落ちる鮮血に顔を顰め、ヨロヨロと立ち上がった彼は背後に鋭い視線を感じ振り返った。

「あ…、ラヴィ…。」

「“あ…、ラヴィ…”じゃありませんよ!レオ…エンリケ様!ホントに貴方は無茶ばかりなさって!後を付けてきたのは正解でした。」


後ろに巨大な鷲を従えた少年は、レオルドを睨み付けてそう言い放った。


「アベル。もしかして彼の鷲に乗せて貰ってここへ?」

「そうです。上で途方に暮れていたところに彼がやって来て、事情を話したら快く…。」

「そうか。ありがとう…えっと…。」


フェイが汚れた手を洋服で拭き、少年に差し出す。

「ラヴィ…ラヴィ・エドモンドです。ご主人様が、大変ご迷惑をおかけしました。」

ラヴィと名乗った少年はニコリと微笑み彼女の手を握り返した。