「ソイツは柄を抜くと刃が隠れている。強度は強くないがそこそこは戦える…使うといい。」

「エンリケ、アンタはどうするんだ?」

「俺か?そうだなぁ…俺は…フェイの盾になる。」

「なっ…そんなことしたら今度は足一本じゃ済まないかも…。」

「その時は、帰りはお前に背負って貰うさ…来るぞ!」


グォォォォッ

唸り声をあげ、キマイラが大岩の上から彼ら目がけて飛び降りた。



ドサッ

フェイの前に躍り出たレオルドをキマイラは前足で突き倒し、彼の胸の上にのしかかった。

「くっ!フェイ…早く攻撃を!」

彼の叫び声と共に、フェイがロッドの柄を引き抜きキマイラに斬りかかる。
炎を帯びた白刃がギラギラと輝き、キマイラの皮膚を抉る。


グオッ

キマイラは怒りの声をあげ、フェイを睨め付けた。
その目の光りに、彼女の身体は硬直し動けなくなった。


(これが…恐怖…嫌だ!私は、こんな所で死にたくない!アベルに…まだ、好きだって言ってない。私は…。)

「アベルーーーーー!」

フェイは全ての思いを込め、彼の名を叫んだ。



キュォォォォォ!

鋭い鳴き声が穴に響き、バサバサと大きな羽音がフェイの耳を掠めた。