「あのさ…ここ…ずれてる。」

「は?」


フェイが遠慮がちに頭を指さし苦笑いを浮かべる。

「うわっ!」

レオルドは微妙にひしゃげ斜めにずり落ちたカツラを慌てて戻した。
その様子を見て、ニヤニヤと笑いを浮かべていたフェイが真顔になった。

「エンリケ…もしかしてお前…本当は…。」

「うわぁぁぁっ!」


フェイの眼差しにレオルドは自分の正体がばれたことを確信し、その場に縮こまった。

「…お前って、本当はツルピカ君だったんだ…私達と同い年だろうに若禿げなんて気の毒にな。」

「はっ…はぃぃぃ?」

「大丈夫、このことはアベルには言わないから♪二人だけの秘密にしよう♪」

フェイがニヤリと嫌な笑みを浮かべ、レオルドを見つめた。


(フェイの奴!まるで鬼の首を取ったような笑顔だな…。まぁ、コイツの早とちりのお陰で俺が国王だということはばれてなさそうだが。若禿とはなぁ…。)

彼は肩を竦め、首を横に振った。

その様子を満足そうに眺めていたフェイの表情が急に固く強ばった。


「エンリケ…動くな…。」

彼女はゆっくりと剣の柄に手を掛けた。
レオルドの背後に真っ赤な瞳が輝き、カッと開かれた口からタラリと涎が垂れた。