「…じゃあ、また。……今度はバレンタインにね」


そう言って、彼から箱を受け取る。

思考とは裏腹な行動が、より一層私を悲しくさせる。

バカな私。

“あとちょっとだけ”

たったそれだけなのに、どうして言うことができないのだろう。


「うまかった。チョコ、また待ってるよ」


笑顔を浮かべ、私に背中を向けて歩き出す彼。

今すぐその背中を、追いかけることができたなら。

私はこんなにも苦しい思いに翻弄されることはなかったのだろうか。

その背中を追いかけられることが許されているのは、私じゃない、彼の“彼女”。

隣にいることが許されているのは、私じゃない……。


“チョコ”がチョコレートのことなのか、それとも私のことだったのか。

それはわからなかったけれど、彼が最後に笑った顔が脳裏に焼き付いて、消えてくれようとはしなかった。

次に会えるのは、2月14日。

バレンタインデーの日。