心臓の音が、彼に聞こえてしまうのではないかと思うくらいに強く打ちつけていた。
私は彼になんて答えて欲しいのだろうか。
もしかして、『いない』と答えてくれるのを望んでいる?
もし…もし、『いない』と言ってくれたなら、私はどうすればいい?
「…なんで?」
「…な、なんとなく…。
だって毎月あたしのチョコ食べに来るし……」
しどろもどろになりながらの答えは、きっとちぐはぐだらけで、
彼にとっても私にとっても意味のわからないものだったと思う。
私は彼の顔を見ることなく、ひたすら俯いたまま、答えを待っていた。
「…まあ、一応、いる…」
なにを期待していたのだろう。
わかっていたはずだ。
今時のこんな顔もそこそこの男の子に、彼女がいないわけがない。

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