[短]Chocolate~From Bitter~


わざわざ“毎日14日に”なんて回りくどいことをせずに、

『明日も会いにきたい』と言うだろう。

彼は、私を好きなわけではない。

名前も聞いてくれない人が自分のことを好きだなんて、そんなことをうぬぼれるつもりはない。


それなら、彼はどうして…。


“1つだけ、これを聞いたらほかに何も聞かない”

そう自分にいい聞かせながら、意を決し、聞けずにいたことを口にする。


「…あの、さ…。
…彼女とか…いるの?」


ガラにもなく体と唇が震え、普段の私からは想像も出来ないようなか細い声が出た。

勢いよくチョコを口に入れていた手の動きが止まる気配がした。

砂場で遊ぶ子供たちの声さえ鬱陶しく思えるくらいに静かな空気。