明日はバレンタインデー。
彼があのベンチで待っていることなんてないとはわかっていながら、
私はひとり公園のベンチでチョコレートを食べるのだろう。
男は、私が返答しないのをいいことに、行くところ行くところついてまわる。
「本命なんていませんよ」
「じゃあ───」
「でも、」
彼との出来事は、今、私の足枷になどなってはいない。
雪のように柔らかく、そして優しく、今でも心の中心に存在し続けている。
決して消えたりはしない。
この先、2月14日が来るたび、私はあの日のことを思い出すだろう。
くるりと男の方を向き、穏やかな声で言った。
「大切な思い出があるんです」
END.

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