[短]Chocolate~From Bitter~


そんなことを考えてみても、現実がそううまくいくことはない。

現実は時に優しく、そして時に残酷だ。


ひらひらと舞う粉雪の姿が、視界の端に入り込む。

去年、彼と初めて会ったときは、雪なんて降っていなかった。

私と彼にとって、これが“初雪”。

些細なことに、くだらない嬉しさまでこみ上げてくる。


「…私」


喉をクッとしめて、膝の上に乗せた両手をぐっと固める。

自然と瞳は足下に向き、彼の表情を見ることができなかった。


「…もう、ここにはこないね」


吐き出した息が白く、今日が真冬なんだと、2月14日なんだと、強く思い知らされた。

淀んだ雲は、私たちの関係を表しているようだった。

普通のチョコレート。