「ごちそうさまでした」 彼はそう言い、両手を胸の前でパン、と合わせた。 合わせて、私に瞳をむけて、無邪気な笑顔を浮かべる。 その笑顔に、私は早くも決意が壊れてしまいそうになる。 「うまかった。なんか、1年前のあの日に戻ったみたいだ」 どうして彼は、私が“最後”を覚悟した途端に、そんなことを言うのだろう。 出来ることなら戻りたい。1年前の、バレンタインの日に。 戻って、もし、すべてをやり直せるとしたら、私はどんな行動をとるのだろう。