決めた決意が、音をたてて崩れてしまいそうで怖い。
お願いだから、優しくなんてしないで。
「なんでもない」
私がそう言って再び強く箱を押しつけると、彼は素直にそれを受け取った。
2月はまだまだ寒く、コートを羽織りマフラーまでしているのに、
時折吹く強い風が、私の体を凍えさせていくかのように突き刺さる。
「今日は普通のチョコ?」
ガサガサと箱を開け、中身を確認するなり私に問いかけてくる彼。
私はうん、としか言えず、彼がチョコレートをほおばる隣で、冷たい空気にただ耐えた。
「風邪引くからもう帰ろう?」と、砂場で遊ぶ子供をあやす母親。
「嫌だ。」と駄々をこね、握りしめたおもちゃのスコップを離そうとしない子供。

![[エッセイ]気持ち](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.762/img/book/genre12.png)
![[短編集]恋花](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.762/img/book/genre1.png)
![[極短]限りなく5に近い4](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.762/img/book/genre99.png)