[短]Chocolate~From Bitter~


めまぐるしく変わる目の前の風景に、すぐには追いつくことができなかった。


『…えっ…』


そう言って彼の顔を見たときには、すでに遅かった。

視界の中に広がったのは、彼がおいしそうにチョコレートをほおばる姿だった。

溶かすときに水が入り、ひびだらけのチョコレート。

絶対おいしくなんてないはずなのに。


『すごいうまいじゃん』


はにかみ笑顔に、お世辞ではないのだと気づかされる。

子供みたいなその無邪気な、無防備な笑顔が、私の心を軽くしていく。