かすかに揺れるベンチが、彼が隣に座ったのだと教えてくれる。 私は彼には視線を向けようとはせずに、わずかな可能性を信じ、辺りを見渡した。 誰もいない。 つまり、この男は、私に声をかけている。 その結果にたどり着くまで、私はしばらくの時間を費やしてしまった。 やっと思考が追いついたとき、突然視界の中に手が忍び込んでくる。 『ちょーだい』 いきなりのびてきた手が、私の手元にある箱をあっさりと奪っていく。