その日私は、通学路の途中にある木下公園のベンチで、気が済むまで泣き続けた。

家に帰って泣けば親や兄弟にからかわれるのが目に見えているし、

友達の前で弱い自分を見せたくはなかったから、丁度誰もいなかった木下公園で。

泣いたのは、失恋して悲しかったからじゃない。

悔しかったから。

あんな冷酷な男を好きになってしまった自分が、酷く惨めに思えたから。

受け取ってもらえなかったチョコレートを握りしめ、私はただ泣いていた。

そんな時だった。


『あげる人いないの?』


聞き覚えのない声に、私の嗚咽が止まる。

視界の中に突如現れたスニーカー。

一瞬間を置いたあと、スニーカーは私の視界から消え去り、

同時にすごく近くでベンチが軋む音が聞こえた。