恥ずかしくて顔をあげることなく、先輩の返事を待っていた。

“好きだ”とは言わなかったけれど、バレンタインにチョコレート。

このふたつが揃えば告白だということを、先輩も知っていたはず。

駄目かもしれない。でも、もしかしたら……。

そんな期待は、先輩の言葉であっけなく壊された。


『もらってもなにも、俺、君のこと知らないし?
知らないやつからチョコもらうほど女に困ってないんで』


私は先輩のなにを見ていたんだろう。

先輩のどこを好きになったんだろう。

私が想像していた先輩は、もっと優しくて、知らない人にも親しく声をかけていて……。

結局、私の感情は恋ではなく憧れだったということ。

それを、遠くなる背中に教えられた。