『あげる人いないの?』
『…へ?』
『チョコ。』
“デリカシーのない人”
それが彼の第一印象だった。
毎月14日、木下公園、チョコレートの約束。
最初は板チョコを溶かしてオリジナルの容器に入れた、簡単なバレンタインチョコだった。
次の月はチョコレートケーキ。
その次はトリュフ。
チョコレートスフレにガトーショコラにチョコレートフォンデュ。
1月14日。
“彼”に会うのはこれで12回目。
「チョコ!」
彼は私を“チョコ”と呼ぶ。
私の本名は千代子(チヨコ)。
けど、彼にとっては私の名前などどうでもいいらしい。
ただ、あの日私が持っていたのがチョコレートだったから、
私のことをチョコと呼ぶようになった──と、2回目に会ったとき、彼は言った。

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