黙り込んだ紫馬を見て、都は目を吊り上げた。

「あれ?
パパは、私と腕を組んでバージンロードを歩くのが嫌なのねっ。
もう、いーもんっ。
ねぇ、清水さん、私と一緒に腕を組んで歩いてくれる?」

再び至近距離で清水の瞳を覗きこむ都。
紫馬は焦って、主義も信条も過去も現実もすべてかなぐり捨てて口を開く。
表情は、嘘っぽさ満点の営業スマイルだ。

「もちろんだよ、都ちゃん。
パパは男性関係を持ったことが無い都ちゃんと腕を組んで歩きたいな」

「そうでしょう?
だから、もう。
結婚式まで大雅を私に近づけないでっ」

「都さん?」

駐車場から戻ってきた大雅が、慌てて彼女を抱きしめ口を塞ごうとするが、するりと逃げ出す始末だ。

まるで、二人が小さな子供に戻ったかのような鬼ごっこが始まってしまった。