「それなのに、大雅ったら、全然人の話を聞こうとしないんだもんっ。
あれ、最低っ!」

「……で、どうしたんですか?」

仕方が無いので、あまり聞きたくは無いが続きを促す。

「逃げ出してきたに決まってるでしょう?
まぁ、最終的には車に乗って連れて帰ってもらったけど。
とにかく!
婚約したからって、何でもかんでも自分の手に入ると思ったら大間違いなんだからっ」

仁王立ちになって怒っている都には、女性の色っぽさの欠片も無い。

「都ちゃん?」

騒ぎを聞きつけて、紫馬が顔を出す。

「あ、パパ」

都はにっこり笑って見せた。

「ねぇねぇ。バージンロードはさ。
やっぱりバージンで歩くのが当然よね?」

「…………」

紫馬は当然頷くことなど出来かねて、言葉を失う。
それが当然だとしたら、何人の女性を既に敵に回していることだろうか。