くすり、と。
紫馬が軽く笑い、形の良い瞳をすうと眇めて見せた。

『鋭い人は嫌いじゃないよ。
だけど、ヒデさんが会社でハメられたのは俺がどうこうできることじゃない。
確かに、あの会社はきな臭い噂がいくつもあったから気にはなっていたけれど。
その二択に答えるなら<助けるのが目的>。
とはいえ、それを機にここに来てもらえるならさらに大歓迎。なんていう邪念もないことはない』

OK?と。
冗談とは思えぬ口ぶりで、紫馬が真面目に語る。

『俺にここで何か出来ることでも?』

『もちろん!
うちのお姫様の付き人になって欲しいんだ。
いかにも執事って感じの人間、ここには居ないし。
それに、出来ればヤクザを終始娘の傍に置いておきたくないだろう?』

ヤクザの台詞じゃないな、と。
清水はかすかに笑う。

しかし、紫馬は存外に真剣な眼差しでそう言ったのだ。

『いいよ、じゃあ、それで』

……あまりにもあっさり清水が答えたので、紫馬は思わず指に挟んでいた煙草を落としてしまった。

テーブルの上を火のついた短い煙草が転がる。

やれやれ、と息を吐いて紫馬はそれを拾い上げた。