剣呑というよりもはや、強暴だな。

と。
清水は心の中で勝手に少年の視線を形容していた。

車は静かに夜の街を泳ぎ、都内にあるとは思えないほど広く閑静な住宅の中でようやく止まる。

『大雅くん、姫をお預けしてもよろしいですか?』

車を降りる際、本気とも冗談とも取れぬ口調で紫馬が少年、こと大雅に切り出した。
大雅は答える代わりに素早く腕を差し出す。

そうして。
紫馬が彼女を抱えるより、もっとずっと丁寧に都の身体を抱き寄せた。

再び都が瞳を開く。
そして、自分が誰の腕に抱きしめられたのか確認したのか、すぐに夢の世界へと戻っていった。

大雅は、宝石……というよりは、刺激すると爆発する不発弾でも抱えたかのように、慎重かつ優しく彼女を抱えて邸へと入っていく。

しかし、清水の目を惹いたのは、その少年に深々とお辞儀をしている見るからに荒くれ者と言った風の男たちだった。

『神経質なんだか、大物なんだか分からないんだよね、マイハニーは』

煙草に火をつけながら、紫馬が呟く。
それから、松葉杖を使って立ち尽くしている清水に視線を向けて、にっこり笑った。

『だけど、ヒデさんのことを気に入ったことだけは間違いないみたいよ』

『気に入ったって』

清水は思わず鸚鵡返ししてしまう。
気に入られるような覚えは、なかったからだ。