清水の予想に反して、病室の外にヤクザと思われるものは居なかった。
冷たいリノリウムの床の上を、看護師たちが忙しそうに行き来しているばかりだ。

『おじさん、もう、動けるのね』

都が無邪気に笑う。

『ああ、おかげさまで』

清水は眼帯を付けた顔で笑って見せた。

が、軽く笑顔が引きつるのは許して欲しいと願ってもいた。


拳銃を自由自在に操る子供なんて、物騒極まりない。

が。
彼女はまるでそんな事実はないかのように、天使としか表現出来ないような愛くるしい笑顔で、清水を見上げるばかりだ。

『紫馬は?』

『お仕事』

大学に行くことを、仕事に行くと言い含められているのか。
はたまた、清水のような一般人には予想もつかないようなヤバイ仕事でもしているのか。

――君子危うきに近寄らず、だな。

清水はそれ以上言及するのは止めておいた。


随分伸びた黒髪をさらりとかきあげる。

『ジュースでも、飲む?』

子供なら誰でも喜びそうな台詞だと思ったのだが、都は首を横に振る。
それでも、清水に誘われるがまま、日当たりの良いロビーまで歩いた。