電話を切るとクッキー作りに戻った。


今日花巻くんが私を見詰める目付きったらなかった。


昨日あんな女と私を残して逃げ出した癖に
図々しいにもほどがある。


私にだってプライドがあるんだから。


でも…抱きしめられた時、私の中で何かが弾けたようだった。

目を閉じた花巻くんの瞼が美しくて、あのままあの場で、愛し合いたい衝動に尽き動かされた。


自制心のない女だったら、誰でも、何の躊躇もなく花巻くんの唇を得たろう。


でも、私は花巻くんの唇だけではなく、全てが欲しい。


身も…心も!


花巻くんが、私に心陶して、二度と私から離れないようにしなければ、何の意味もない。


それには戦って奪うしかない。


彼自身を見失わせるほど。


あの女が現れて私は変わった。


後々考えると、自分を見失っていたのは私の方だった。


それくらい焦っていたのだ、
…恋に。