電車に乗ってる時間がたまらなく長く思えた。


扉が開くと同時に飛び出して改札まで走ったが、


君代はいなかった。


…さすがに学校に行った?


でもオレは何か胸騒ぎがして、その足で君代の家に向かった。
君代ママは近くのホームに介護士のパートで毎日5時までいないはず。


だから誰もいないと分かっていたけど、君代が見付かるまでとにかく全てを確認せずにはいられなかった。


案の定、君代ママのクルマはない。


念のためチャイムを鳴らそうかと躊躇っていると、君代が歩いて来るのが見えた。


君代はオレを見るとかけだした。


「純!何かあったかと思って心配したよ!今、純のうちに行ってきたの」


「ごめん」


「純、お昼食べた?」


「…朝から何にも食べてねえ」


「うちにどうぞ。ラーメンくらいなら作れるよ、…多分」


ラーメンくらいなら、多分オレのが上手く作れるだろう。
君代はオレの作ったラーメンを何度もおいしいと言いながら食べた。


ラーメン食べていてもかわいいのは、君代くらいだろう。


小さな口がかわいい。


湯気のかかった細い鼻先がかわいい。


もぐもぐ動く顎がかわいい。



やば。



さっきまで悩んでいたのに
オレまた、サルモードに入った気がする。



食欲の充たされたあとは…って本能のままかよ。



君代は、黙りこんだオレの様子に察しがついたのか、
ちょっと笑った。



けど、いつもみたいに
誘って来ない。



つまり、脚を絡めたり、体を触ったり、意味ありげに笑ったりさえしてこなかった。



…?





どうして?