小さな蕾


 今の俺に、冷静な判断はできなかった。



 自転車に急ブレーキをかける。
 全力で走っていたため、多少の摩擦がおこったが自転車は止まった。


「うわぁあ!っっ…え?ちょちょっ蓮兄?」

 伶菜は慌てて俺の腰に強くつかまる。




 なんかもう、8時までに門をくぐらなきゃゲルベロスに怒られるとか
 伶菜に嫌われるとか、迷惑掛けるとかは
 正直、どうでもよくなっていた。


「俺は……」





「んっ?なんかいったぁ?」

 後ろを振り向く
 寒さで真っ赤になった伶菜。きょとんとした顔で俺を見つめている。



「どうしたのぉ。遅刻するよ?」






「俺は……俺はお前のことがずっと好きだった」



 ついに…
 ついに言ってしまった。

 伶菜に…。

 許されることではないのに。
 
 伶菜が困るのに。


俺は…いってしまったんだ。